台風14号とカレントの恐怖

シルバーウィーク5連休は、台風14号のうねりが入り
湘南でかなりのサイズがありました。


初日9月19日(土)、神奈川県茅ヶ崎市と平塚市の間の
相模川河口、通称『馬入』でサーフィンをした際に
台風のうねりによるカレント、自然の力を感じさせられる
事件がありましたので、まとめておきたいと思います。


まず前提として、9月19日の2日前からの天気図を
以下に貼付けます。
天気図画像は、『気象人』から転載させて頂きました。

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秋になり、台風の進路は太平洋側を北東に向かって
日本列島をなめるように進む進路になっています。

台風14号は、関東の真南からゆっくりと北上してきて、
関東には強いうねりが入っていました。

湘南もかなりサイズアップしており、当日は、茅ヶ崎周辺では
頭~頭半程度の波が割れていました。



この日、馬入ではインサイドはブレイクしておらず、
湾の正面の遥かアウトで頭前後のクリーンな波が
ブレイクしていました。
(以下の湾航空写真下部の黄色丸近辺がピーク。
インサイドの黄色斜線部分は、ドン深で
ブレイクしていないエリア。)
馬入4

湾全体に、オレンジ色の矢印の様な強く大きな
カレントが発生していました。


パドルアウトしたところ、徐々にカレントにはまり、
平塚よりの河口脇堤防の先のエリアまで出されます。
(写真中央下部の緑の丸、1と書いてあるあたり。)

このポイントでは、パドルをすることにより何とか
場所のキープはできますが、まっすぐに陸へと
戻ることはできない状態でした。

カレントの状態がわからないため、左手平塚側の
テトラへの恐怖心もあり、思い切ってアウトに出るという
判断ができないまま、15分~20分程度この場所で
ひたすらパドルをする羽目になったのですが、
たまたまアウトに向かう30代前後とおぼしきローカルの
男性に声をかけてみたところ、
『アウトに出れば、恐らく左(東)に向かうカレントが
あるので、思い切ってアウトに出てしまった方が良い』
とのアドバイスをいただき、アウトから廻って、
湾の右側のエリアから無事に戻ってくることが出来ました。


僕があがってから10分くらいして、一緒にいた2人の
先輩のうちの1名が戻り、もう1名の先輩もほどなく
戻って来そう、とのことで、一安心していたのですが、
事件はこの後に起りました。


カレントが結構きつかったこともあり、念のためと思い
湾の右側から横向きに出ている堤防の先(写真右側の
緑の丸)から先輩の様子を見に行きました。
馬入

先輩は既にかなりのインサイド(写真黄色丸の3近辺)まで来ており、
普通にパドルもしていましたので、問題はなさそうだったのですが、
念のためと思い、手で『OK?』という確認のサインを送ったところ、
大きく×印が返ってきました。

インサイドは波が割れていないのでパドルは大変ですが、
とても帰って来られない状態とは思えなかったので、
『なんでです~?』と聞いたところ、
『板が・・・・・・・・・・・・・』と何かを言っています。

板に注目してよく見てみると、先輩の他にもう一人、
先ほどのローカルらしき人がいますが、何故か
板が2人で1枚しかありません。
板を流してしまった様です!


今日のカレントの状態では、2名で板1枚では帰ってくるのは
かなり厳しそうです。
これはマズいと思い、
近所にいた方に携帯を借りて海上保安庁に連絡。
ところが、海上保安庁の電話番号がわからず、結局
消防119に連絡をしました。(焦っていたので、177と勘違いを
してしまったのですが、正しくは118でした・・・。
177は天気予報ですよね・・・。)


結果、15分程度で、ヘリ2機、救急車、消防車が到着し、
それからもう少し遅れてジェットスキーが到着したのですが、
それまでの間に、2人はあっという間に再度カレントによって
写真4の黄色丸のあたりまで流されて行き、姿が見えなく
なってしまいました。

それなりに疲れていたはずなので、かなり不安に思って見ていると
なぜか沖から、2名が板2枚でそれぞれパドルをして
戻ってきました。


これは後から聞いた話なのですが、先輩は、アウトから帰ってくる
途中で、板を流してしまったローカルのお兄さんを、写真の
2の黄色丸近辺で発見したそうです。
馬入

板を流した人は、先輩が発見した際、かなりのパニック状態で、
『助けてくれ!助けてくれ!』と叫んでおり、先輩は自らも
かなり疲れていた状態で一瞬躊躇したものの、家族、息子の顔が
脳裏に浮かび
『ここで助けなければ人として親として一生後悔する』
と思いすぐに救助にあたったそうです。

そこから2名で1枚の板を使って何とか泳ぎ、3の黄色丸まで
戻ってきたものの、それ以上戻れず4の黄色丸近辺まで再び
流され・・・・。

そこに、偶然にもその人が流した板が漂流していて、その板を
取って二人で戻ってきた、とのことでした。


結果としては無事だったのですが、このローカルの方は、
偶然にもこの先輩に会わなければ、もしかして最悪の事態に
なっていた可能性もかなり高かったと思います。

また、2人で再び流された先に板が漂流していなければ、
救助されるまでの間に何かが起きていた可能性も
充分にあります。


今回の件については、今後の教訓としてどこまでしっかりと
生かすことが出来るかを考えてみたのですが、考えれば
考えるほど、自分がまだまだ未熟であることを実感させられずには
いられません。


まず最初に考えたのは、
”『頭程度のクリーンな波がアウトで割れている』という
シチュエーションで、海に入る前に、冷静に状況を見て
考えることができるか?”
という点。

頭程度のサイズの波でサーフィンをすることは年中ありますし、
しかも波が良い状態では、今までの僕では、充分に状況を
見る、という冷静な行動はできていなかったと思います。

今後はどうか?と考えてみましたが、どこに判断のポイントを
おけば良いのかが、すぐには整理できませんでした。


しかし、自分なりに考えてみたポイントは以下の通りです。

・頭以上というサイズは、ある程度以上の経験があっても、
毎回、冷静に状況を確認する必要があるサイズである。
・馬入は年に数回、サイズが上がったときにしか入らない
ポイントのため、カレントに関する知識が足りなかった。
そのため、最初にはまっていたポイントで、無駄にパドルをし
体力を消耗した。(流されたローカルの方に会わなければ、
こちらも事故にあっていた可能性があった。)
ポイントに関する、カレント等の基本的な知識は、日頃から
知っておくべきこと。特にサイズがあがったときの特性等。
・インサイドが割れていないポイントは、戻ってくる際に
カレントの影響を受けやすい。インサイドが割れていない
ポイントでは慎重に状況を見るべき。また、カレントを
ふまえた帰りのルートを考えてからゲットアウトするべき。
・左右に人工物があるポイントは、帰りのルートの制約や、
カレントによる危険性が高まるため、カレントと帰るルートを
慎重に考えるべき条件になる。
・河口は沖出しのカレントが発生するので、その点も
認識が必要。
・河口は砂がアウトに流されるため、インサイドが割れづらい。
この点、帰りのルートを考える点とセットで考慮すべき。

という程度です。


列挙してみればいずれも知っていることばかりではありますが、
実践できていないことを思い知りました。

サイズが上がったときにこれを意識してから海に
入れない様では、本当に修行が足りていないといわざるを
得ない、と、かなり反省させられたサーフィンでした。


ちなみに、翌日9月20日は千葉はクローズ、七里ケ浜で
入りましたが、一気にサイズダウンしてしまい、腹サイズの
分厚い波でした。
9月21日は千葉 御宿で入りましたが、セット頭の
かなりのダンパー波でした。
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昨日9月22日は引き続き千葉はかなりのサイズがあり
ジャンクなコンディションだった様です。
家族サービスのため、サーフィンはできませんでした。
本日9月23日は千葉もかなりサイズが落ち着き、
方々でサーフィンができた様でしたが、本日も残念ながら
サーフィンはできませんでした・・・。
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2 Responses to 台風14号とカレントの恐怖

  1. mipozo says:

    初めてコメントさせていただきます。

    神戸でBBを5年やっていますが、
    カレントや海の状況が、いつもイマイチわからずで
    ローカルの方や先輩方に教えていただいております。
    私も一度板を流して恐ろしい思いをしたことがあるので、
    ドキドキして読ませていただきました。

    怖がってばかりもいけませんが、
    やはり自然相手には慎重に、謙虚に、冷静に
    ならなければと改めて真摯に思いました。
    わかりやすい画像と解説、ありがとうございました!

  2. うー says:

    コメントありがとうございます。

    そうですね、僕が今回このポストを書いたのも、自分自身が自然の力を甘く見ているな、という反省からです。これは以前から思っていたことなんですが、人間の力の幅が1~100だとすると、自然の力の幅というのは1~5,000位あって、人間というのは、その中の、端の数%の中で生きているんだと思うんです。だから、自然を甘く見ていると、ほんの一瞬で自分たちが到底あがなえない様な状態に身を置くことになってしまうことがあると。

    サーフィンという、自然の中で楽しむスポーツをやる以上、当然の様に常に考えておくべきことが色々あって、その中では、知っておくべき知識と、自身のものの考え方、という双方が必要とされていると思っています。きっと馬入のローカルの方々は、このポストを読んで、『ふざけんなよ。もう馬入に来んな。』と思われると思いますし、そういう意味では、このポストを書くことに躊躇もありました。ただ、このポストは一つの経験であって、『これがわかっていれば良い』、という話ではないんだと思っています。どちらかといえば、『わかっていないことがたくさんあって、そのことを常に意識することが必要』という経験の一つであって、これの経験を共有することが、どなたかのお役に立てばと思ってまとめてみました。

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